[11/15公開,11/22最終更新]
大分大学は11/12(日)に大分市(ホルトホール大分)において防災シンポジウムを開催しました。
当日は大分市民(防災士,地域防災リーダー)約150名の参加を頂きました。プログラムは以下の通りです。
当日のプログラムとディスカッションの内容・結果について,公開を致します。
平成29年度 防災シンポジウム
大分の防災を考える in 大分 -地域における防災・減災力の向上を目指して-
期日:11月12日(日) 13:30〜16:40
会場:ホルトホール大分 3F大会議室
◆主催者挨拶
大分大学 西園晃理事(研究・社会連携・国際担当)
※西園晃理事
◆特別講演
演題 「災害発生…その時報道の現場は」
講師
OBS 大分放送
記者/古城秀明 様
アナウンサー/平川侑季 様
※左:古城秀明様 右:平川侑季様
特別講演は,災害報道の現場を実際の映像を交えながらご講演を頂きました。
地震,津波の場合,また大雨の場合の災害報道の対応や情報発信の違い,現場から見た情報受発信の課題,避難のタイミングなどもご説明頂きました。
本年の風水害を通じ,「早期避難」の重要性についてもご指摘を頂きました。
◆ディスカッション
テーマ 「災害時における地域の役割を考える 〜情報・避難・教育・復興の視点から〜 」
パネリスト
立命館アジア太平洋大学 教授 本田明子 氏
大分大学高等教育開発センター 教授 岡田正彦 氏
大分市女性防災士会 事務局長 上山 容江 氏
大分市防災危機管理課 主査 佐藤 真人 氏
別府市共創戦略室防災危機管理課 課長補佐 田辺 裕 氏
コーディネーター
大分大学理工学部 准教授 小林祐司
(大分大学減災・復興デザイン教育研究センター【CERD】代表)
【ディスカッションの内容・結果・まとめ】
今回のシンポジウムは,これまでの「パネルディスカッション」とは一線を画す,本当の意味での「ディスカッション」にしたいという思いで,会場とのやり取り+参加者が「参加をしている」という感覚を持って貰うために三つの工夫を行いました。
一点目は,4つのキーワード(情報・避難・教育・復興)に対する問題意識・課題をディスカッション開始前に付箋に記入して頂き,学生スタッフが仕分け(分類)を行い,ディスカッション中に意見の紹介を行い,加えて議論の題材にする。
二点目は,用意したいくつかの質問に対して,クリッカーという機器を使い参加者に回答して貰う。そしてそれも議論の題材にする。
三点は,随時意見を受け付ける意見箱の設置(インターネットからの回答)です。
ディスカッションが深まったどうかはわかりませんが,参加者自身が「参加している」雰囲気は作れたのではないかと思いますし,問題意識の共有には繋がったと考えています。
※質問への回答数は80人程度で回答を締め切って集計しています。サンプル数は80名程度としてください。
[1]イントロダクション ※クリカーによる質問と結果
(質問)
① 住民は(そもそも)防災に関心がないと思う
→ YES = 52% NO = 48%
② 地域の防災活動に正直苦労している
→ YES = 81% NO = 19%
③ 私の地域はかなり特徴的な取組をしていると思う!
→ YES = 16% NO = 84%
④ 今日,どうしても言いたいことがある!(クレームでは無く,要望)
→ YES = 7% NO = 93%
(付箋に書き込まれた内容 → PDFファイルでまとめています)
① 情報 → PDF
② 避難 → PDF
③ 教育 → PDF
④ 復興 → PDF
[2]パネリストによる話題提供
パネリストからの話題提供・それぞれの立場からの防災・減災に対する問題意識〜「情報」「避難」「復興」「教育」の視点から〜を述べて頂きました。
- 立命館アジア太平洋大学 教授 本田明子 氏
・熊本地震の際の情報方入手の課題(留学生を中心に)
・情報発信の課題(英語による情報提供など) - 大分大学高等教育開発センター 教授 岡田正彦 氏
・学習の「強度」(インパクト)を高め,具体的行動へ繋げること
・様々な場面で役立つ「ひとづくり」
・地域での仕組みづくり,役割分担,連携・協働の重要性 - 大分市女性防災士会 事務局長 上山 容江 氏
・防災対策に関するアンケート調査の紹介を通じた課題提起
例)自宅の建築年や避難場所の理解→100%,耐震回収の必要性は理解しているが未実施→50〜60%など - 大分市防災危機管理課 主査 佐藤 真人 氏
・災害時の対応行動についての課題提起
・住民の行動に繋げるための情報の限界
・防災を自分事にすること - 別府市共創戦略室防災危機管理課 課長補佐 田辺 裕 氏
・熊本地震を通じて顕在化した課題
・避難所の課題(開設のタイミングなど)
・地域による避難所運営,情報伝達,ペットへの対応など
[3]災害時の「情報」に関するテーマで討論・意見交換
質問
①災害に関する情報入手で最も利用するものはどれ?
- テレビ(NHK,民放)= 59%
- CATV = 1%
- ラジオ = 16%
- 携帯電話・スマホ = 16%
- パソコン(インターネット)= 5%
- 勘 = 1%
- 防災無線 = 1%
②災害リスクは共有化できているか?
→ YES = 28% NO = 72%
③地域に声かけの仕組みができている
→ YES = 26% NO = 74%
④要支援者名簿の共有をしている
→ YES = 36% NO = 64%
意見交換
- 試しの学習会
- 補助金の取り組み、避難訓練を中心に
- 地域の情報伝達設備に対する補助金支援
- 自治会と自治公民館
自治公民館が川沿いに立地していて危険 - 普段歩ける道はブロック塀等が倒れて危ない
- イメージした避難訓練
- 避難訓練時に集まった場合に集まってよかったと思える地域の文化を作っていく
- 発令する立場から
地域を特定することは困難
地域の方から情報を提供していく
災害時のイメージ - 台風の場合、昼に避難等を発令する
- 対応を地域に頼らざるを得ない場合がある
- そのためにも避難所の状況を知っておく
- リスクの共有,おおらかであること
- 避難所がリスクの高いところに立地する場合がある → これでいいのか
- リスクを共有して発信していく
(情報については,災害のイメージ・リスクの共有など,幅広い意見交換がなされました。情報の共有化にあたっては,あらためて地域のリスクを検証することが重要でしょう。情報については避難との関連もあり次の議論へと繋がりました。)
[4]「避難」に関するテーマで討論・意見交換
質問
①(声かけの仕組みがあるかないかは別として)実際に声かけをして,避難を促したことがある
→ YES = 21% NO = 79%
②住民はそもそも切迫した状況にならないと動かないと思う
→ YES = 95% NO = 5%
③住民が避難場所を知っているのか疑わしい
→ YES = 38% NO = 62%
意見交換
- 要支援者名簿への不安
共有ができていないのではないか?
共有はしていいのはわかっているけど、実際にはうまくできていない - 情報発信者側の課題
スマフォの使い方
住民から行政への声を出していく
情報の広さの問題(どの情報を選択し,判断すべきなのか) - テレビの情報を見てから行動するのは遅いのではないか?停電の時は?
- 防災無線
どれくらい設置しているのか?
防災行政無線では伝えられる情報が限られる
無線は別府に3機しかない
スピーカーの声が聞きとりにくい
→ サイレンを聞いて行動をとってもらいたい - 外国人は知っている単語だけで判断してしまう
(外国人がいるかどうかに関わらず)コミュニティの観点
顔が見れる付き合いをするべき
→ 地域で積極的に何かをする - 情報共有で要支援者の救助が行いやすくなる
しかし、個人情報が弊害になっている
世帯数が増えれば、難しくなる
→ 個人情報は個人を守るためのもの - 個人情報の扱い方を決めるべき
- どうやったら情報にアクセスできるのか?
- マニュアルがあったらいいのではないか?
- 紙媒体も必要なのでは?
- 情報共有の仕組みづくりを行う必要がある
(避難の課題として,やはり災害時要援護者(配慮者)への対応と名簿共有の問題,またコミュニティのあり方も議論され,積極的な関与が求められると指摘がありました。避難と関連のある情報は受信者側,発信者側とも様々な課題があることが浮き彫りとなり,特別講演でも指摘された「早期避難」の重要性,そのためのリスク共有など,避難+情報の課題の共有が図れたと考えます。)
[5]情報や避難に結びつくための「教育」とは? 討論・意見交換
質問
①地域向けの防災教育を実践している
→ YES = 66% NO = 34%
②そもそも防災教育・・・何をすれば良いかわからない
→ YES = 26% NO = 74%
③地域の防災教育は十分である
→ YES = 6% NO = 94%
④学校や関連機関との連携が取れている
→ YES = 18% NO = 82%
⑤そもそもコミュニティの課題がある
→ YES = 85% NO = 15%
意見交換
〜学校において〜
- 地震火災は防災教育はしている
- 火山などの自然災害にたいしては少ない
- 学校間での格差
- 被害を受けた学校、想定されている近くの学校では防災教育に対する意識が高い
- 防災訓練は、リアリティが必要
- 生徒自身が臨機応変に判断できるように
〜地域において〜
- リスクの共有 → リスクの本質をとらえる!
- 避難した後どこにいくのか?
- 災害発生後まで考えた避難訓練
- 要支援者名簿を活用
(付箋の意見を紹介)
- 避難訓練の成功例
- 学校側に関わって支援していく
- コミュニティと防災教育
〜避難訓練について〜
- その時だけになってしまう → 持続性を如何に確保するか(役割分担)
- 親も一緒に学ぶ+地域
- 消極的な地域住民への対応(参加しない、呼びかけにも応じない)
- オーダーメードの仕組みづくり
- 危機管理の教育をしっかりする
(教育については,地域それぞれで苦労があることがわかりました。特に「参加を促すために効果的な方法」「防災教育の重要性」が指摘されたと思われます。パネリストの方からは「(例えば)年代や層に応じたメニューの必要性」が指摘されました。いずれにせよ,防災リーダーの役割は大きいものの,住民一人一人の意識改革が必要と考えられます。)
[6]災害後に直面する「復興」への課題,討論・意見交換
質問
①被災の想定をしている
→ YES = 50% NO = 50%
②担い手がいるか?
→ YES = 29% NO = 71%
意見交換
- 高齢化(人口減)という直面している課題への対応の難しさ=担い手不足
- 若い方が地域コミュニティに参加していないのではないか?
- 地域で次の担い手の確保
- 自主避難の際に、隣近所で支えあえる関係作り、役割分担
- 被災のイメージをしておかないと復興が進まない
(「復興」の議論を深めるための時間が取れませんでした。申し訳ございません。このテーマは単独で議論すべき事項かも知れません。災害後のイメージの共有,平時のまちづくりに如何に関わるか,そしてその延長上に「担い手」の育成。現時点で復興デザインを進める難しさを感じたところです。)
[7]コーディネーターによるまとめと提言
今後もこのような機会,特に一人一人の問題意識を共有できる仕組みを作っていくことの必要性を訴えました。
- 活動へ参加を促す視点 → 当事者意識(我が事意識)
- 地域のなかの役割分担 → 要支援者への対応も含む
- 被災のイメージ
- 担い手の育成
- ネットワークづくり
このような課題に対して,地元の大学が果たす役割は大きいと考えます。
大分大学CERDもこの課題に積極的に取り組んでいきたいと思いますし,そのような場を大学において設けたいと考えています。
前述の通り「復興」における課題は地域それぞれとしても,事前に対応を図ることができることもあります。この点の議論をさらに深めていきたいと考えています。
[意見箱への投稿内容]
- とても画期的ですが、見渡して見ても、使いこなせている人が何人いるのでしょうか?
- テレビ放送などによる内容を判断材料にするのでは遅いのでは?
- ここホルトホールは避難所になってます。帰宅困難者等色々な人が来ると思います。英語も自信がありません。本田先生の話を聞いて心配になりました。
- 金池校区は今から校区の防災会を立ち上げようとしています。意見交換等の場があった方が良いと思うのですが?
- 留学生のみならず、外国人の方への対応は、一部の問題ではなく地域住民全体の課題なのでは?
- 別府市は地響きがひどくて、怖かったと聞いてます。
- 要支援者の取り組みを市に強要されている気がする。市はしません。町内でしてくださいね。と言われているので。
- 避難しなくて良いように、「町中のマンションに引っ越して来たので避難訓練はしなくてよい」と言われます。火事の時は逃げますよね。
●関係団体等
主催:国立大学法人大分大学
共催:大分高等教育協議会(地域連携研究コンソーシアム)・大分市
後援:大分県・大分合同新聞
●シンポジウム運営
大分大学 研究・社会連携部研究・社会連携課
大分大学 産学官連携推進機構 産学官連携部門 鶴成 悦久 准教授
大分大学 減災・復興デザイン教育研究センター【CERD】 ※大分大学認定研究チーム(BURST)
大分大学 小林祐司都市計画研究室所属の学生諸氏