大分市佐賀関大規模火災に伴う避難行動等に関するヒアリング結果について

2026年1月20日(火)

大分大学減災・復興デザイン教育研究センター(CERD)と大分市が連携し,大規模火災が発生した田中・神山・東町地区の復興状況について,ドローンを用いた定点観測を実施しています(撮影:令和8年1月10日)。

大分市佐賀関大規模火災に伴うヒアリングの概要と避難行動

減災・復興デザイン教育研究センター(以下,CERD)では,令和7年11月18日に大分市佐賀関で発生した大規模火災を対象に,被災状況や避難行動(動態)の実態を把握することを目的として,令和7年12月10日から12日にかけてヒアリング調査を実施しました。調査は,当時避難所として運用されていた大分市佐賀関市民センターにおいて,被災された27名の方を対象に行いました。調査にあたっては大分市や大分県と連携し,避難所の支援団体そして被災者の皆様のご協力のもとで実施しました。なお,調査結果は被災者の証言にもとづき作成しており,時刻および火災の位置は不確定の情報を含みます。

本調査では,火災発生時における避難行動の状況や火災の目撃情報について,時間の流れ(タイムライン)に沿って,位置情報を含め可能な限り正確に把握することを重視しました。これにより,避難の過程だけでなく,地区内における火災の広がりや周辺状況を時系列で整理することが可能となりました。

調査結果から17時30分頃(火災発生時刻は不明)から19時00分頃にかけて,住民同士による避難の呼びかけが相次いで行われていたことが確認されました。また,警察や消防関係者(消防職員・消防団)も住民に対して避難の呼びかけを行っていたことが明らかになりました。これらの呼びかけを受けて実際に避難された方も多く,火災発生直後から田中地区公民館において炊き出しが行われたことや,隣保班(数世帯で構成される地域の小規模なコミュニティ)による声かけが行われるなど,地域における共助のつながりの強さがうかがえました。

一方で,避難後に貴重品等を取りに自宅へ戻る行動が複数確認されました。実際に自宅に戻ったものの,火の勢いが強く断念した事例もあり,避難時には現場や自宅に戻らないことの重要性を改めて認識する結果となりました。

大分市佐賀関大規模火災に伴う火災(飛び火)目撃情報

さらに,本調査では,被災者が同時刻に地区内で目撃した火災の位置や飛び火の状況を時系列で整理しています。その結果,火災はおおむね17時30分頃(詳細は不明)から21時頃にかけて,地区の西側から中央部,さらに東側の山地へと拡大し,地区中央部から放射状に広がっていった様子が推定されました。なお,調査結果は被災者の証言にもとづき作成しており,時刻および火災の位置(範囲の中心を示す)は不確定の情報を含みます。

大分市佐賀関大規模火災当日の風速について(推定)

このほか,本調査では,飛び火の状況や風向・風速といった延焼動態,ならびに当時の気象条件についても詳細なヒアリングを実施しました。加えて,同意が得られた被災者の方々から,当時撮影された写真や映像の提供を受け,定性的な証言にとどまらない客観的分析を試みました。

その一例として,漁業に従事されている被災者の方からは,火災発生前の17時頃,田中グラウンド(地区の高台に位置するグラウンド)において,ボールが前方に飛ばないほどの非常に強い風が吹いていたこと,また火災発生時の17時30分頃には,西北西方向から毎秒10~12メートル程度の強風が吹いていたとの証言が得られました。併せて,当時の状況を撮影した写真の提供を受けました。

提供された写真は,20時37分時点(スライドの38分は37分に修正)に被災地域をスマートフォンで正面から撮影したものであり,画像内には火災に伴う火の粉の飛散軌跡(残像)が明瞭に確認されました。本調査では,これらの写真を単なる記録資料として扱うのではなく,火の粉の軌跡と周辺建物との相対的な位置関係,ならびに画像データに含まれる撮影条件(露出時間等)を用いた写真解析による風況推定を実施しました。

具体的には,火の粉が火災発生区域のほぼ上空を移動していたと仮定したうえで,構造物を基準とした軌跡の長さとカメラの露出時間から,火災発生時の上空風速を定量的に推定しました。その結果,当時は地上約40~50メートル上空において,北西から西北西方向の強風が吹いており,その風速はおおむね毎秒13~17メートル(平均約15メートル)であったと推定されました。

このように,住民の証言と写真解析を組み合わせることで,観測機器が十分に整備されていない災害発生時においても,延焼に大きく影響する風況を一定程度定量的に把握できる可能性が示されました。

まとめ

本調査を通じて得られた被災者の証言,避難行動の時系列的整理,ならびに写真解析による風況推定等の成果は,大規模火災発生時における地域の実態を多角的に明らかにするものでした。これらの知見は,住民一人ひとりが早期に危険を認識し,主体的に避難行動へ移るための自助を支えるとともに,隣保班や地域コミュニティによる声かけや支え合いといった共助の重要性を再確認するものです。さらに,消防・警察等による迅速かつ的確な情報提供や避難誘導といった公助の在り方を検討するうえでも,重要な基礎資料となります。

CERDでは,これらの調査成果を大分市や大分県はもとより関係自治体や地域と共有し,地域防災や避難行動の検討,防災教育や訓練への反映を通じて,自助・共助・公助が相互に機能する実効性の高い防災・減災対策の構築に今後も取り組んでいきます。

<CERD佐賀関大規模火災分析チーム>
佐賀関大規模火災に関する調査分析は以下のCERD研究チームで実施しています。
 センター長 鶴成 悦久 (総合防災計画)
     講師 三﨑 貴弘 (地形分析・風速風向)
     助教 福田 昌代 (避難動態・復興形態)
  客員教授 小西 忠司 (火災物理)
  客員教授 板井 幸則 (消防活動)
  招聘教授 樋本 圭佑 (火災安全工学)東京科学大学 多元レジリエンス研究センター教授
  招聘教授 丸岡  晃 (風工学)八戸工業高等専門学校 産業システム工学科教授
  研究室学生
協力・連携機関 大分市防災局,大分市消防局,大分県防災局 

ページトップへ戻る