※一部更新作業中
防災シンポジウム in 日田 〜 九州北部豪雨からの教訓 〜
日時:2018年8月18日(土) 13:30〜17:00
会場:マリエールオークパイン日田
主催:国立大学法人大分大学
共催:日田市 大分高等教育協議会
後援:大分県 大分合同新聞社 九州大学大学院工学研究院附属アジア防災研究センター
企画:大分大学減災・復興デザイン教育研究センター 一般社団法人 NINAU 地理空間情報活用に関する大分地区産学官連携検討会
協力:SAPジャパン株式会社 ESRIジャパン株式会社 株式会社ザイナス
8月17日,18日と日田市において,日田市内高校生と大学生によるフィールドツアー(8/17)とシンポジウム(8/18)を開催しました。
以下,シンポジウムの成果として公開いたします。それぞれの地域で「防災・減災」,そしてこれからの災害への向き合い方などの「きっかけ」や「ヒント」として頂ければと思います。
防災シンポジウム in 日田「九州北部豪雨からの教訓」
司会:岡野 涼子(一般社団法人NINAU 代表)
1.開会挨拶 |
大分大学理事(研究・社会連携・国際担当)・副学長 減災・復興デザイン教育研究センター長 |
西園 晃 |
日田市長 | 原田 啓介 様 |
2.特別講演 |
九州大学大学院工学研究院附属アジア防災研究センター センター長・教授 |
三谷 泰浩 様 |
3.学生提案 |
★フィールドツアー(Youtube)
その他の動画については以下をご覧下さい。
Link → CERD Youtube 動画リスト
※フィールドツアー行程(8/17)
日田市役所→大鶴地区・瀬部・大肥→豆田地区・花月川→小野地区→解散
★ストーリーマップ
また,フィールドツアーの内容やデザイン・シンキングを通じた学生提案を「ストーリーマップ」としてとりまとめ,発表を行いました。
Link → 防災シンポジウム in 日田 「学生提案」(自動再生)
学生提案 ムービー & ストーリーマップ
作成協力:SAPジャパン株式会社 ESRIジャパン株式会社 株式会社ザイナス
4.パネルディスカッション |
■ パネリスト(PN) | |
日田市長 | 原田 啓介 様 |
日田市小野地区振興協議会会長 | 藤井 維清 様 |
日田市大鶴振興協議会会長 | 石井 勝誠 様 |
大分工業高等専門学校・准教授 | 工藤 宗治 様 |
■ コメンテーター(CM) | |
九州大学大学院工学研究院附属 アジア防災研究センター長・教授 |
三谷 泰浩 様 |
■ コーディネーター(CD) | |
大分大学減災・復興デザイン教育研究センター 次長(理工学部・准教授) |
小林 祐司 |
(1)趣旨説明
- 災害が多発するなか(災害多発時代),これまでの考え方で良いのか?
- 一人一人が責任を持てる社会にしていかなければならない
- 若い世代の参画も求められる
(2)学生提案へのコメント
<PN/CMによるコメントおよび議論>
- 災害とどう向き合うかを考える必要がある。そのためにも,リスクを把握すること。
- ひとりひとりが責任を果たすことが重要
- 災害に向き合う姿勢を見せる
- 地域に戻って大丈夫なのか?
- 高齢者(のみが)がこういった(防災)ことを考えるのはまっとうか?
- 担い手の育成が求められる
- 復興には時間がかかる
- 俺たちの故郷は俺たちが守る
- 技術者の不足により,災害の現場に人が足りない
- 我々が経験してきたことが役に立たないかもしれない
- 高齢化が進む中で自治を守っていけるのか → 新しい仕組みが必要
- 産業・流通の変化
- 生業のあり方から復興を考えなければならない
- 世代によってコミュニティの認識が異なる
- 高等教育のなかで,机上での知識が多いがダイレクトに響いているのか?
- 「コミュニティ」の本当の意味を理解しているか?あらためてコミュニティの在り方を考えないといけない。
- 現場の実際の空気感を感じなければわからないことがある
- 被災者の方とともに汗を流して作業しないとわからないことがある
- ボランティアに参加する意識,自発的に参加する意識を育む機会をつくる
- 昭和学園生徒がボランティアに行ったことでお店の人がお店をやり続ける勇気をもらった
- 若い子は自分が必要とされることを求めている・・・自己有用感
※クリッカーの回答者数は概ね「150人」程度とお考え下さい。
【クリッカー0】
Q:今日はどうしても言いたいことがある!
Q:しかし,まぁ何で連休の最後やねん!
(参加者の基本情報) Q:年齢
Q:自宅
Q:勤務地(日田市内の方のみ)
(学生提案への感想) Q:学生提案は興味深いものがあった
Q:防災・減災対策に若い視点は不可欠だ |
(3)PD
▶視点① 災害対応のあり方とは?
<PN/CMによるコメントおよび議論>
- 何よりも命を守ってもらいたい
- 市民の方には知ろうと努力してもらいたい
- 避難指示で逃げないという状態を考えなければならない
- 日頃から、高齢者どうしが助け合える仕組み作り
- なによりも自助努力が大切
- 五年前までは小野は大丈夫だと思っていた。五年前の災害時もう再び来ないだろうと思ったが,そうではなく小野の地域はどこも安全ではない。
- 道路が水害で全部だめになり,新しい公民館でみんなが助かった
- 自治会長の判断が素晴らしかった。自治会長への感謝。
- 各町内に2名以上防災士がほしい
- 「率先避難者たれ」・・・早期避難の重要性
- 知ろうという努力をする
- 臨機応変に判断することの大切さ
- 言わなければならない,伝えなければならない
- 情報について分かりにくいというのはその通りだと思う。したがって,避難勧告とはどういう状況かなどの紙を配ろうと思っている
- 県境を超えた情報が速やかに伝わるシステムの構築(災害だけに留まらず)
- リスクの把握ができており,自分の身近なことであるという情報の出し方をしなければならない
- 空振りな情報でも6割あたっていれば良い方
(会場から)
「教育が大切」,どういう風に教育をしていけばいいのか?
- 災害がいつ起こったのかによって被災状況が全く違う
- その時の状況によって避難のあり方が全く違う
- 親御さん・家族がいるのか?によって避難状況が違う
- 高齢者が住んでいて、若者は帰ってこれないという状況が生まれてしまった。孤立してしまう。
- どういう人が地域にいるのかを把握していてほしい
- 小野振興協議会,小野小学校の存続について「いつ戻れるのか,また戻らないのか,あり方の検討を行っている
- 今後,学校再建に関して小野全体の共通認識として捉えなければならない
- 通学中の道の問題
- 学校の問題地域の避難の支援のあり方
- 災害リスクコミュニケーション
- マイタイムライン
⇒こういうことが起こったらこういうことをします!!
⇒家族会議につかう(じいちゃんはどうする父ちゃんはどうする?) - 連絡が無くてもやっていけるように
- マイタイムラインは家庭のなか,地域のなかでも実践できる
- 家庭のなかの信頼関係が大事
- 信頼関係をつくり実践をしていく
- 学校にも(取り組むべき)責任がある
- 親だけではなく子供に考えてもらう宿題にすればいいのでは?
- 「経験に勝るものはない」
- 自分の身は自分で守る
- 災害から一年で避難訓練を行った ⇒ (予想外の)50人もの参加
- 実際自分がどういう行動をするかを実践してくれた人もおり,真剣に住民が考えていることがわかった
- 災害を経験したことはむしろ強みである
(会場から)
防災無線について,同じ日田市内である地域とない地域なぜ差があるのか?
- 衛星回線を使う防災無線を各戸にと考えている ⇒ 有線が災害時意味をなさなかったため
※クリッカーの回答者数は概ね「150人」程度とお考え下さい。
【クリッカー1】 Q:これまでの雨,豪雨で被害に遭ったことがある → はい = 41% いいえ = 59% Q:身近な災害リスクをしっかりと把握している → はい = 72.3% いいえ = 27.7%
Q:雨が降った際の対応行動について
Q:今回の西日本豪雨の際,避難を行なった
Q:防災情報として最も重要だと思う情報端末・手段は
Q:そもそも「情報」がわかりにくい |
【視点①のまとめ】
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▶視点② 災害に対して責任を果たせる社会とは?
<PN・CMからのコメント・議論>
- ハード整備は簡単にはできない(限界があること)
- どうやって情報を届けるかが課題
- 全員が共通の情報をとっているか否かで状況が変わってくる
- 情報の届け方について行政として取り組んでいきたいと考えている
- インフラ整備はもちろんだが、防災マップなど・・・行政を頼らず地域住民が率先して行う
- 地域住民の相互理解
- 若い人に災害を伝えていくことが大切
- コミュニティの確保
- 宇和島の吉田地区はまだ復旧が進んでいなかった。⇒ボランティアのありがたさを改めて感じた
- ボランティアへの感謝
- みんながお互いに助け合う社会にしていきたい
- 長期の責任を考える,1~2年たってどうなったか(復旧・復興のプロセス)
- 復旧作業を調べて,定点観測をしている
- 学生や次世代の人にいかに伝えるか,意識を共有するか
- 直後だけでなく長期にわたって(長いスパンで)考えていかなければならない
- 自分の命は自分で守る
- 出来ないことは助けあって ※犠牲になれという話ではなく,できるだけ早い避難を
- ハード整備はいくらやってもやりたりない
- 今が一番危険な状態であり,復旧中は被災前よりも弱く,危険な状態であることを知っておいて欲しい
- 強弱(必要なところに必要な手立てを)を持たせたハード整備
- 説明責任を持ったハード整備をしなければならない
- ハード整備には限界があるから,バランスを取りながら進めていく
- そこには行政と住民の相互の理解が必要であり,それが平時の信頼関係となり,災害時にも機能する
- 新しいコミュニティ・自治のあり方が問われている
- 社会の構成が代わっていくため,支える人たちが減っていく。少子高齢化で大きなリスクを抱えた人が増えてくる
- 住民自治組織(中津江などの例),どうやって組織が支えていくかが課題
- 行政と今後どういった関わりを持つのか
- 若い人は何らかの思いをもっていて,行動をしてるのではないか
- 若者には今までになかった感覚があるのではないか,新たな価値観がある
- 100年スパンが通じなくなってきている。10000年スパンといった覚悟が必要なのではないか。
- 住まい方自体を考え直さなければならないのではないか
- インフラ整備は人口増を基本に考えており,切り捨てないといけない部分があるのではないか
- 住めないけれども離れられない(のが実際)
- 生業の中で生きていかなければならない人もいるため,持っていた資産からお金が回ってくる仕組み
- 産業の在り方の政策を今後考えていかなければならない
- 稼ぐ場所・住む場所を確保することが求められ,土地の違う活用の仕方も
- 所帯の少ない自治会は班が成り立たず,限界集落は1人の役割が増えてしまう
- 自治会自体が今後どうなっていくのか?自治会の統廃合を考えなければならない
- 日田市163自治会ある。コミュニティをどう維持するか・・・現在隣保班の統廃合を行っている(既に6年前に統廃合を行った)
- 住み続けるためには安全性は必要だが、長年継承される伝統などを中心に考えることも必要
- 村地域の在り方を模索していかなければならない
- 個人個人で地域について考えていかなければならない
- それぞれに合った組織づくりが必要で,如何に地域を盛り上げていくのか
- ひとりひとりが「責任を取る」という覚悟が必要
- 自然現象のなかに人間が食い込んでいる。災害はおこる。「知らない」じゃ済まない。
- 災害を受けていない人も責任を果たさねばならない
※クリッカーの回答者数は概ね「150人」程度とお考え下さい。
【クリッカー2】 Q:もっと住民は地域の防災・減災に参画すべきだ → はい = 97% いいえ = 3% Q:我々の自治会は防災への意識が高い方だと思う → はい = 26% いいえ = 42% わからない = 32%
Q:もっと若い世代の参画が必要だ
Q:災害対応の責任は誰,どこにあるのか?
Q:やっぱり「当事者意識」を持つことだ
Q:住民一人一人にも責任があると思う |
【視点②のまとめ】
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(4)CDによるまとめ
- 防災学術連携体の提言にも「あなたには災害の危険性を知る義務と自分と家族を守る責任がある」と述べられている。
- 自治会の再構築も「まちづくり」という観点からは求められる
- 防災・減災を「地域づくり」の一部として取り組み,今日的な地域課題に向き合うことも必要
- 一人一人がそれぞれの立場で責任を果たしていくこと,これをやっておけばいいということはない
- 住民一人一人にも不断の努力が求められている
- 何よりも,子ども達,若い世代にその「姿勢」を示すべきである・・・それが一つの責任でもある
【シンポジウムの感想】
※クリッカーの回答者数は概ね「150人」程度とお考え下さい。
Q(役に立ったか)(役に立ちそう) → はい = 92% いいえ = 3% わからない = 5% |
〜最後に〜
本シンポジウムとフィールドワークは多くの方々ご協力を頂きながら実施することができました。この場をお借りしまして,心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
初日のフィールドワークでは,地域住民の皆さん,日田市,国土交通省に大変お世話になりました。高校生や大学生にとっては,現地の生の声を直接伺うことができ,また「空気感」を感じることができたのではないでしょうか。
翌日のシンポジウムでは,大学生を中心とした作業により「学生提案」という形で,今後の防災・減災対策について彼らの「生の声」をお届けでき,また今後も残る「かたち」にできたと思っています。
シンポジウムに参加された方々はどのようにお感じになったでしょうか。彼らはもっと「関わりたい」と思っているのではないでしょうか。でも「関わり方」の難しさが「コミュニティ」にあるのかもしれません。「コミュニティ」とは何か。机上だけではわからないことが多いはずです。「コミュニティ」を知る・学ぶ上で重要なことは「現場で何を感じるか」にあると考えています。我々大人はその「機会」や「場」を提供する役目があるのだと思います。それが「担い手」の育成にも繋がっているはずです。「自己有用感」という言葉も出てきました。確かに皆「役に立ちたい」と思っているはずです。当然ながら,個人でも積極的に関わって行くことが求められます。
この「コミュニティ」を知り,地域課題を見つめ,その方策・取組を提案し,(失敗したとしても,新たな取組を)実践し続けて行くことが,巡り巡って「防災・減災」のあり方に繋がっているのではないでしょうか。そこを突き詰めていけば,「責任」について議論する必要は(そもそも)ないのかもしれません。
「成熟した社会」という言葉が使われることがあります。果たして社会は「成熟」しているでしょうか。「成熟した社会」とは,地域社会の持続性が確保され,・・・という言い方は小難しいのでもう少し噛み砕いて言えば,「今生きる大人(達)が,次の世代(子ども達,若者)に胸を張って今の地域や社会を引き継げられるものとなっている」ということではないでしょうか。そこに「防災・減災」,さらにその先の「安全・安心」が含まれているべきものなのだと思います。
我々はあまりにも便利になったが故に,危機管理能力が(もともと低かったものが)極度に低下していると言われています。このような状況を打破するためにも,防災教育をはじめとした社会が関わる「教育」の役割は大きいのです。「教育」の形も様々です。家庭,地域,学校,広くは地域社会全体,国における「教育」といった,それぞれ役目,役割が異なる教育の「かたち」があります。それぞれの立場で必要な「教育」を施していく必要があります。それぞれの立場と役割においてです。それが「責任」でもあります。何かを残し,何かに繋がる「教育」こそが本当に必要な「教育」であるはずです。その際,一緒に考える「共考」の姿勢を忘れてはなりません。
シンポジウムのなかでも発言をしましたが,今日の災害は我々の経験が全く役に立たなくなっているような様相を呈しています。では,我々も社会も変えるべきところは変えなければ対応できなくなってしまうのではないか。そんな危機感を共有し,新たな取組へと繋げていかなければなりません。今までできなかったことを実現するのが,今日的な防災・減災なのだと思います。原田市長の言葉にもあった「新しい自治組織」もそのなかの一つの挑戦とも言えます。これらも一つの「責任」です。
今回のシンポジウムでは「対応」と「責任」というキーワードで議論,情報共有を行いました。あらためて我々自身に問いかけてみる必要があります。
「地域への関わりや安全・安心に対する「責任」を果たしているだろうか?」
「子ども達に自信を持ってその姿勢を見せることができるだろうか?」
大分大学減災・復興デザイン教育研究センター【CERD】